とらやの羊羹
羊羹の歴史
もともと羊羹は中国の料理で、文字通り「羊の羹(あつもの)」(羊肉の汁物)でした。鎌倉~室町時代(12世紀末~16世紀後半)、中国に留学した禅宗の僧侶らにより、朝夕の食事の間に摂る点心(てんじん)の一つとして、日本に伝えられました。禅僧は肉食が禁じられていたため、この時の羊羹は小豆など植物性の材料を使って羊肉に見立てた精進料理の汁物だったと考えられています。その後、羊羹は寺院から貴族や武家の間にも伝わっていきます。主に饗応(きょうおう)の料理として供され、その広まりのなかで汁と具は別々になり、さらに甘みがつけられたものもつくられて茶席などで用いられるようになり、江戸時代には菓子として定着しました。
初期の菓子の羊羹は、小豆、小麦粉、砂糖などの生地を蒸してかたちをつくったものと、その簡易版である、生地を枠に流して蒸したタイプのものの2種類があったと考えられます。このうち、かたちをつくるタイプは現在の上生菓子の「羊羹製」(一般的には「こなし」という)、枠に流したタイプは蒸羊羹につながったとされます。1700年代半ば以降になると、寒天を使った水羊羹や、水羊羹の製法をさらに進化させた煉羊羹が江戸でつくられるようになりました。煉羊羹は、滑らかな食感やほど良い弾力、日保ちの良さなどもあって人気を博し、羊羹の主流となっていったのです。
種類
羊羹にはさまざまな種類がありますが、主な羊羹をご紹介します。

煉羊羹
餡に煮溶かした寒天を加え、煉り固めたもの。蒸羊羹に比べ口当たりが滑らかで、日保ちがよく、現在の羊羹の主流です。

水羊羹
通常の羊羹よりも水分が多く、喉ごしも爽やかで、冷やして食べる夏の定番和菓子として人気です。

蒸羊羹
餡に小麦粉や葛粉などを加え、蒸し固めたもの。蒸羊羹ならではの弾力がほどよく感じられる食感が特徴です。
とらやであつかう羊羹

夜の梅
とらやを代表する小倉羊羹。切り口の小豆を夜の闇に咲く梅に見立てて、この菓銘がつけられました。

おもかげ
沖縄・西表島産の黒砂糖をつかった羊羹です。

新緑
抹茶の自然な色あいと心地よい苦味をお楽しみいただけます。

阿波の風
阿波和三盆糖を使用した、洗練された甘みと奥ゆかしい香りが特徴の羊羹です。

はちみつ
はちみつのこくのある甘みと香りを生かした羊羹です。

和紅茶
独特な焙煎の香りが特徴の和紅茶と、白餡の風味とが一体になった味わいの煉羊羹です。

空の旅
白小豆を散らした紅色の煉羊羹で、夕焼け空に浮かぶ雲を表現しています。空港限定。

白味噌
西京味噌を使用した、まろやかな味わいの羊羹です。京都限定。

黒豆黄粉
京都産の黒大豆・大鶴大豆を煎りあげた黄粉の香ばしい風味が特徴です。京都限定。

季節の羊羹
四季折々の情景や草花を映した季節限定の羊羹です。
羊羹を楽しむ
気軽に楽しめる小形羊羹もよいですが、時にはひと棹の羊羹を切って器に盛り、ゆったりと味わってみてはいかがでしょうか。
とらや(虎屋菓寮)では8分(約2.4㎝)でのご用意が多いですが、お好みのサイズで楽しめるのが棹の羊羹のよいところ。薄く、あるいはダイス状に切るなど、お好みの大きさでお召しあがりください。
羊羹を食べる際は、お好きな飲み物とお召しあがりください。小さなフォークなどをおつかいいただくのもよいですが、「黒文字」と呼ばれる菓子楊枝がおすすめ。樹木の爽やかな香りや感触と共に、羊羹をお楽しみください。

羊羹に合う飲み物
羊羹といえば、日本茶との組合せが定番ですが、アルコールや紅茶などとも意外に相性がよいものです。
- おすすめの飲み物
- シャンパンなどのスパークリングワイン
- ウィスキーやカルバドス
- ハーブティー(バ一ベナ、ミント、ネトルなど)
- レモネード

羊羹のアレンジレシピ
羊羹に他の食材や飲みものを組み合わせると、おいしさが広がります。
手軽に楽しめるアレンジレシピをご紹介します。
- ニューヨーカーにも愛された「羊羹サンドイッチ」。サンドイッチ用の食パンにクリームチーズを 塗って、間にピーラーで 2ミリ程度にした煉羊羹を挟みます。羊羹とクリームチーズとの相性が絶 妙です。
- 羊羹をダイス状にカットして、無糖のココアパウダーをまぶせば生チョコのような食感に。
- ラム酒に漬け込んだドライフルーツを、羊羹にのせると、少し贅沢な夜のデザートに変化します。
虎屋文庫の読みもの
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