とらやの菓子づくり
原材料

小豆
小豆は和菓子のいのちである餡の質を左右する大切な原材料です。とらやでは、北海道十勝産の「エリモショウズ」という品種を使用。北海道は国内最大の小豆の生産地で、特に十勝は昼夜の気温差が大きいため、風味が豊かで、色艶、舌触りの良い上質な小豆が育ちます。

白小豆
白小豆は気候に左右されやすく生産量が限られている希少原材料です。とらやが主として使用している白小豆は、「福とら白」※という独自の品種。種まきから収穫までほぼ手作業で栽培され、主な生産地は群馬県と茨城県です。とらやの白小豆栽培の歴史は古く、昭和2年(1927)、15代店主・黒川武雄が群馬県の利根郡農会(農協の前身)へ栽培を委託したことに始まります。
- 2018年2月、この白小豆は農林水産省により「福とら白」として品種登録されました。民間による小豆の品種登録は初となります。

寒天
羊羹に欠かせない寒天は、天草(てんぐさ)などの海藻を原材料とした日本の伝統食品です。とらやで使用する天然の糸寒天は、雨や雪が少ない寒冷な山間地である長野県伊那地方・岐阜県恵那地方の指定工場にて、昔ながらの製法でつくられています。特性が異なるいくつかの種類の海藻をブレンドし、とらやが指定する品質(粘度等)に仕上げていただいています。

和三盆糖
和三盆糖は、「竹糖(ちくとう)」と呼ばれるサトウキビを原材料に徳島県、香川県の一部で生産される、日本独特の砂糖で、さらりとした口どけと上品な風味が特徴です。その名は盆の上で三度研ぐ(手で練る)ことに由来するともいわれています。とらやでは昔ながらの製法でつくられている徳島県・岡田製糖所製の和三盆糖を使用しています。

黒砂糖
独特の風味が特徴の黒砂糖は、サトウキビの絞り汁を煮詰めてつくったもので、ミネラル成分が多く含まれています。とらやでは、「沖縄黒糖」※のひとつで、丸みのあるやさしい味が特徴の西表島(いりおもてじま)産の黒砂糖を使用。定番羊羹の『おもかげ』をはじめ、さまざまな菓子に使われています。
- 沖縄の8つの島(西表島・与那国島・小浜島・波照間島・伊平屋島・粟国島・多良間島、伊江島)で、サトウキビ100%でつくられる黒糖を指す。

つくね芋
つくね芋は山芋の一種です。とらやの薯蕷製の菓子には、芋の風味が強く適度にコシがある国内産のつくね芋を主に用いています。丸くゴツゴツした芋の皮をむき、すりおろして菓子に使用します。
原材料のはなし
製法

羊羹
とらやを代表する煉羊羹は、小豆を煮る作業から完成までに3日を要します。小豆を煮て、羊羹専用の餡をつくり、その餡に煮溶かした寒天と砂糖を加えて、じっくりと煉りあげます。炊きあがった羊羹の煉り具合を見極めるなど、熟練した職人の目で確かめながらおつくりしています。

餡
とらやの菓子づくりは、餡づくりから始まります。御膳餡(こし餡)、白餡、小倉餡、味噌餡など、種類はさまざま。それぞれの菓子に合わせて硬さや糖度なども調整しています。また、とらやの餡づくりの特徴の1つとして、渋きり※の回数の少なさがあります。回数を少なくすることで、小豆の味が損なわれず、風味がしっかりと感じられる餡になります。
- 小豆を煮た際に出る煮汁を捨てること。アク抜き。

羊羹製
羊羹製とは、餡に小麦粉・寒梅粉※を加えて蒸し、もみ込んだ生地のこと。製法が蒸羊羹に通じており、とらやでは「羊羹製」という名称ですが、一般的には「こなし」と呼ばれます。木型を使ったり、手で成形したり、布巾で茶巾絞りにしたりと、仕上げ方法はさまざまです。
- 餅を薄く伸ばして白焼きし、粒子の細かい粉にしたもの。

きんとん製
きんとん製とは、餡玉を煉切※1や求肥※2で包み、そのまわりに網でこしてそぼろ状にした餡をつけた菓子をいいます。そぼろ餡が潰れないように、餡玉は手で持たず台の上に置き、箸でふんわりとつけていきます。切ると美しい断面が現れます。
- 1: 餡に求肥や山芋などを加えて煉りあげたもの。とらやでは求肥を使用。
- 2: 水溶きした白玉粉を蒸し、火を入れながら砂糖蜜を加えて煉りあげたもの。

薯蕷製
薯蕷製とは、つくね芋を使った生地を指します。芋のほのかな香りと、しっとりとした食感が特徴です。とろろ状にすりおろした芋に上用粉(じょうようこ)※と上白糖を少しずつもみ込み、芋のこしを切るように力強くもむことで、ふくらし粉を使わなくても、やわらかい食感になります。この生地で餡を包み、蒸しあげると、真っ白な薯蕷饅頭のできあがりです。
- うるち米からつくられる粒子の細かい粉。

道明寺製
道明寺製とは、道明寺粉※を使った生地を指します。道明寺粉に上白糖を加え蒸した生地で餡を包んだ道明寺饅頭や、寒天を加え型に流した夏向きの涼しげな道明寺羹など、さまざまな表情を持っています。
- もち米を蒸した後乾燥させ、粗挽きしたもの。