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歴史

【赤坂 第9回】正月の大凧飾り

虎屋ビルの壁面に、年末からお正月にかけて掲げられていた大凧を覚えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。豊川稲荷側には六角凧が、赤坂警察署側には5m×3mほどの大きな干支凧と、奴凧が飾られていました。
この凧飾りが始まったのは昭和47年(1972)頃。まわりに高い建物があまりなかった当時、「このビルはアート的だから、何かできるのではないか」と考えた宣伝担当者が、年末の寒い中、青山方面に何度も歩き、車から、あるいは道の向こう側からどう見えるか見てまわり、凧を壁面に掲げることを思いつきました。初年は銀座の百貨店で大凧をいくつか見つけてきて取り付けたそうです。それを見た16代・光朝も「うん、いいじゃないか。来年からはもっと大きいのにしよう」と一言。「どうせやるなら中途半端にしない」という言葉もあり、翌年からは人気の「龍」の字の凧を掲げることにしました。そこで、歌舞伎座の看板や番付を書いていた保坂光亭先生(1907-97)の元へ、ビルの写真をもって「龍」の字を書いてもらえるよう依頼に行きました。後日、何枚も書いた字を見せたあと先生が選んだのは、少し曲がった「龍」の字。担当者は訝(いぶか)しみながらもその字を拡大して凧に採用しました。すると、曲がっていると思った字が、大変に生きてきました。先生は、ビルに掲げられることを考慮した上で筆をとってくださっていたのです。
その後、いつしか奴凧、武者絵を描いた六角凧、干支を描いた凧の3種が1月15日まで飾られる、お正月の風物詩となりました。