日本文化の伝承
四季折々の風情をいつくしむ、日本の心が息づいた和菓子。茶道や古典芸術などと結びつきながら発展し、さまざまな年中行事や習わしのなかで人々の暮らしを豊かに彩ってきました。 時代の折々に培われてきた和菓子と日本文化の魅力を、今に生きる人々と分かち合い、さらに次の世代へと伝えていくことは大切な使命のひとつだと考えています。 和菓子を通して、暮らしのなかにさらなる豊かさや味わいを感じていただければ幸いです。
虎屋文庫

1973年に開設した虎屋文庫は、虎屋に伝わる古い文献、器物を保存するとともに、和菓子関連の資料の収集管理をしています。これらの資料をもとに研究活動を進めるほか、機関誌『和菓子』の発行、ホームページでの情報発信などを通して、広く和菓子の魅力を伝えています。また、和菓子をテーマとし、さまざまな角度からそのおもしろさや奥深さを紹介する資料展を虎屋 赤坂ギャラリーで開催しています。
虎屋文庫の主な活動
資料の収集・調査・保存
長年にわたり宮中の御用を勤めてきた虎屋には、古文書、古器物などの史料が多数伝えられています。たとえば、虎屋の最も古い御用記録(ご注文控え)として、寛永12年(1635)の「院御所様行幸之御菓子通(いんのごしょさまぎょうこうのおかしかよい)」が残っています。これは、明正(めいしょう)天皇が父君である後水尾(ごみずのお)上皇の御所へ行幸された際に、お納めした菓子の記録であり、羊羹、饅頭、落雁、カステラなど当時からさまざまな菓子をつくっていたことがうかがえます。また、虎屋の菓子の意匠や銘が記された菓子見本帳(現在の商品カタログに相当)は53冊収蔵されており、古いものでは元禄8年(1695)に作成された「御菓子之畫圖(おかしのえず)」があります。このほか、菓子を運ぶ際に用いられた容器「井籠(せいろう)」や、菓子木型などの製造道具、江戸時代に出版された菓子製法書ほか多様な史料を収蔵しています。
虎屋文庫ではこうした所蔵史料の保存整理のほか、和菓子に関連する資料収集、調査研究を行なっています。

情報発信
研究の成果を広く発信し、後世に伝えていくことも大切な使命の一つです。1994年より、和菓子関連の研究論文や史料翻刻を中心とした機関誌『和菓子』を毎年発行しています。歴史上の人物と和菓子にまつわるエピソードをはじめ、さまざまな和菓子関連情報を当ホームページにて紹介。長年の蓄積をもとに2017年に『和菓子を愛した人たち』(山川出版社)、2019年に『ようかん』(新潮社)を刊行しました。社外からのお問い合わせにもお応えしています(資料は非公開)。

展示の開催
1973年より、旧本社ビル内のギャラリーにて、「源氏物語と和菓子展」「和菓子を作る職人の世界展」など、和菓子の魅力を多彩な切り口で紹介する資料展を年に1~2回開催してきました。赤坂店リニューアルに伴い一時休止していましたが、2019年11月より4年ぶりとなる「虎屋文庫の羊羹・YOKAN」展を赤坂ギャラリーにて開催しました。今後も年に1回のペースで行なう予定です。

ギャラリー
虎屋 赤坂ギャラリー

2018年、赤坂店のリニューアルに合わせてオープンしました。初めて虎屋を訪れた方や海外のお客様にも気軽にお入りいただき、和菓子や日本文化を身近に感じていただきたいと考え展示を行なっています。2万ピースに及ぶ吉野の檜の無垢材に包まれた静寂の空間のなかで、和菓子はもちろんのこと、「書」や「伝統工芸」など、広く日本文化にまつわる企画展を開催。そのほかにも、講演会やワークショップなどを開催しています。
とらや 東京ミッドタウン店ギャラリー

2007年、東京ミッドタウン店内にオープン。和菓子の魅力とともに日本文化の伝統や奥深さを発信していきたい。この思いに共鳴してくださる方々と手を携え、社員の着想をもとに、さまざまな展示や関連イベントを行なっています。企画展では、原材料や「漆」といった、和菓子に近しいテーマに加え、「郷土玩具」や「祭り」などの幅広い日本の事物を紹介。箸や鍋、弁当箱など、伝統的かつ実用的な食まわりの道具を紹介・販売する「とらや市」も開催しています。
虎屋 京都ギャラリー

2009年、虎屋京都店の改築に伴いオープン。「和菓子」と「京都」をテーマに、虎屋発祥の地、京都ならではの催しを行なっています。企画展では、掛軸や茶道具といった虎屋が所蔵する美術品、和菓子に関連する史料のほか、着物の羽裏や版画など、京都の伝統工芸を紹介。このほか特別展や講演会なども不定期で開催しています。