和菓子だより

2020.07.27

魅力を探る 琥珀製『若葉蔭』 

琥珀製『若葉蔭』 販売中~7月31日迄

季節をうつす和菓子。朝顔やひまわりといった夏の意匠が店頭に並んでいますが、なかでも目をひくのは金魚の菓子ではないでしょうか。近年の金魚ブームもあって、和洋問わず金魚の菓子をしばしば目にしますが、虎屋の『若葉蔭』は大正7年(1918)の見本帳に見える歴史ある菓子※です。透明な生地は、寒天と砂糖を煮溶かして固めたもので、琥珀製(こはくせい)と呼ばれます。なかの金魚は小さな木型を使って作っており、模様や表情が一匹ずつ異なるのが楽しいところ。うろこまで細かく再現されているので、ぜひよくご覧ください。

大正7年(1918)「黒川光保新菓雛形」

なお、金魚の菓子は、夏目漱石の『門』(1910)にも登場します。「一丁の豆腐位な大きさの金玉糖の中に、金魚が二疋透いて見える」。金玉糖(きんぎょくとう)とは、琥珀製の別名で、『若葉蔭』と同趣向の菓子が想像されます。甘党で知られる漱石なので、実際にこうした菓子を目にし、気に入ったので作品に登場させたのではないでしょうか。

※ 明治37年(1904)、明治天皇が渋沢栄一に、虎屋製の、寒天に金魚の細工物を浮かべた菓子を見舞いとして贈ったとの逸話もある