和菓子だより

2020.10.01

こなしは「こなし羊羹」の略だった!

大阪の菓子屋、菊壽堂義信の主人による『日本菓子製造独案内 』(1904) より
(左:表紙   右:こなし羊羹の説明)



関西で親しまれている上生菓子の製法に「こなし」があります。餡に小麦粉などを混ぜて蒸し、もむ製法で、名称は「もみこなす」に由来すると考えられます。意外に思われるかもしれませんが、菓子としての羊羹の最も古い製法を今に伝えるもので、江戸時代には「もみ羊羹」「こなし羊羹」などとも呼ばれていました。「こなし羊羹」の名はよく使われたのか、明治37年(1904)刊行の菓子製法書にも見えます(上図)。しかし、「羊羹」といえば煉羊羹が主流になるにしたがい、「こなし」が一般的な呼び名になったと思われます。

ちなみに虎屋では、「こなし」と同じ製法を、江戸時代には「羊羹仕立」、明治時代後期以降には「羊羹製」と呼んでいます。「羊羹」の名前や製法を重視し、残したいという強い思いがあったのかもしれません。 

※関東では、餡に求肥や薯蕷(山芋)の生地を混ぜて煉りあげる「煉切」(ねりきり)の方がなじみ深い。 

参考 羊羹製『梢の秋』
参考:

羊羹の変遷については、虎屋文庫著『ようかん』 (新潮社、2019)をご参照ください。