和菓子だより

2022.04.20

菓子木型「八ツ橋」 宝永6年(1709)

菓子資料室 虎屋文庫では虎屋歴代の古文書や古器物に加え、菓子に関わるさまざまな資料を所蔵しています。このコーナーでは、その一部をご紹介していきます。

「八ツ橋」の木型(12.5㎝×19.5㎝)。桜の木で作られている。
*画像をご使用になりたい方は虎屋文庫までご連絡くださいませ。

菓子木型は和菓子作りに欠かせない大切な道具のひとつです。特に干菓子は、木型によって精緻な意匠が表現されます。
虎屋では現在使用しているものを含め、約3000点の菓子木型を所蔵していますが、今回はその中から「八ツ橋」(※)の型をご紹介します。通常、木型の多くは制作年が不詳ですが、「八ツ橋」の裏面には「宝永六年」と墨で書かれており、貴重な一例といえるでしょう。年紀のある虎屋の木型としては現存最古とされています。

「八ツ橋」木型の裏面。右上にうっすらと「宝永六年」と書かれている。
「一条とらや」とは現・京都一条店のことで、後年に焼印で付けられた。

直線的な橋と複雑な曲線を描く流水、そして伸びやかに天に向かって花咲く杜若(かきつばた)の意匠は、非常に美しく洗練されています。300年以上も前に作られたとは思えないほど精巧に彫られており、目を見張るものがあります。

拡大図

※平安時代の『伊勢物語』に登場する和歌「ら衣 つつなれにし ましあれば るばるきぬる をしぞ思ふ」に由来する。これは在原業平が、三河の国(現在の愛知県)八橋で杜若を前に妻を思って詠んだ歌で、菓子のほか美術工芸品の題材としてもしばしば用いられる。

大正7年(1918)「型物御菓子見本帖」にも描かれた。