和菓子だより

2022.01.11

『勅題干支新年菓帖』昭和12年(1937)

菓子資料室 虎屋文庫では虎屋歴代の古文書や古器物に加え、菓子に関わるさまざまな資料を所蔵しています。このコーナーでは、その一部をご紹介していきます。

『勅題干支新年菓帖』のうち昭和時代前半に刊行されたものの一部。
左上から時計回りに、昭和2年(1927)、3年(1928)、4年(1929)、
6年(1931)、12年(1937)。

明治から昭和にかけて、趣向を凝らしたさまざまな菓子図案集が制作されました。『勅題干支新年菓帖』(ちょくだいえとしんねんがちょう)もその一つです。これは勅題(現「お題」)1と干支をモチーフにした図案集で、藤澤萬華堂2から発行されました。虎屋文庫では25冊を所蔵しています。

藤澤萬華堂と製菓実験社の共同著作で昭和12年に刊行された、第37号(上画像左下)を見ると、翌年の干支「寅」や勅題「神苑朝」をモチーフにした図案が、考案された地域(京都・大阪・東京)ごとにずらりと並んでいます。前半部はこうしたカラー図案、後半部は製法解説などから構成されました。

「京都之部」より。寅にちなんだ菓子が並ぶ。
「大阪之部」より。勅題や干支のほか、丹頂や松といった新年にふさわしい意匠もみられる。

洋菓子や洋風の和菓子も登場しており、それぞれどのような味わいなのか想像がふくらみます。図案集は主に菓子職人向けに制作されましたが、色彩豊かなページは見るだけでも楽しいものです。

「松竹梅」には「ジヤムを挟んだ」との記述が見られる。
「瑞雲」(ずいうん)には「ジヨナーズをバタークリーム仕上」との記述が見られる。
ジヨナーズとはスポンジ生地の一種であるジェノワーズのこと。

今日においても、年末年始には干支やお題にちなんださまざまな和菓子が作られています。令和4年(2022)の干支は寅、お題は「窓」。ぜひ和菓子とともに新年をお楽しみください。とらやと楽しむ寅年

1 毎年1月に宮中で催される「歌会始」(うたかいはじめ)では、決められたお題に対し、天皇や皇族方、一般の詠進者の歌が披露される。宮中歌会始と御題菓子

2 現在も京都で盛業されている版元。(現在は印刷・包装資材製造販売会社)

全国銘産菓子工業協同組合発行『あじわい』にて連載中の「和菓子探検」。新春号では『勅題干支新年菓帖』から大正時代に刊行された号を取り上げております。ぜひご一読ください。