和菓子だより

2020.12.24

三代歌川豊国「甲子春黄金若餅」文久3年(1863)

(5枚続きの内の右2枚) 右奥に、もち米を蒸す大きな釜と蒸籠(せいろう)が見える。
(5枚続きの内の左3枚) 鏡餅やのし餅などが並べられている。

年末の風物詩である餅搗きの情景を描いた5枚続きの錦絵です。人物には、当時人気の歌舞伎役者が当てられています。軒先で餅を搗き、それを屋内でちぎって筵(むしろ)に並べたり、辛味餅用に大根をおろしたりと、忙しく立ち働く人々が描かれ、賑やかな話し声や掛け声が聞こえてくるかのようです。

江戸の町には、年末になると、釜・蒸籠(せいろ)・臼・杵を持っていき、注文を受けると往来や民家の前などで餅を搗いて売る行商の姿が見られ、引きずり餅や賃餅と呼ばれて庶民の間で親しまれていました。一方で、武家や商家といった奉公人の多い家では家内で用意したため、自家で餅を搗けるのは金持ちと見なされたといいます。上の絵は裕福な商家をイメージしたものでしょうか。餅搗き一つにもその時代ならではの風俗が見えて面白いですね。