歴史上の人物と和菓子

今も昔もお菓子好きはいるものです。歴史上の人物にまつわるお菓子のエピソードを連載しています。
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2002.04.01

夏目漱石と羊羹

羊羹

千円札でおなじみ

千円札の顔としてもおなじみの明治の文豪・夏目漱石。『坊っちゃん』や『吾輩は猫である 』、『それから』などの作品はあまりにも有名ですが、漢詩や俳句もたしなむなど幅広い文才の持ち主でした。その漱石が、羊羹について珠玉の名文を遺しているのをご存知でしょうか?

「…菓子皿のなかを見ると、立派な羊羹が並んでいる。余は凡ての菓子のうちで尤も羊羹が好きだ。別段食いたくはないが、あの肌合が滑らかに、緻密に、しかも半透明に光線を受ける具合は、どう見ても一個の美術品だ。ことに青味を帯びた練り上げ方は、玉と蝋石 (ろうせき) の雑種のようで、甚だ見て心持ちがいい。のみならず青磁の皿に盛られた青い煉羊羹は、青磁のなかから今生まれた様につやつやして、思わず手を出して撫でて見たくなる。…」 (『草枕』新潮文庫より)

お皿の上の羊羹だけでこれだけ語れるのも、さすが文豪といったところでしょうか。別に食べたくはないと書いていますが、こんな文章を読んだら、つい羊羹を買って帰りたくなってしまいそうです。

羊羹の色や質感は店ごとに個性のあるものですが、ここに書かれているのは、漱石が好んだと伝わる本郷の藤むらの羊羹かもしれません。

後年、この漱石の文章を受けて、谷崎潤一郎も羊羹の「冥想的な色」について美しい文章を書いています (『陰翳礼讃』)。

※この連載を元にした書籍  『和菓子を愛した人たち』(山川出版社・税込1944円)が刊行されました。是非ご一読くださいませ。(2017年6月2日)

 

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