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和菓子だより

2019.03.25

桜餅の俳句

江戸時代、隅田川名物として売り出された桜餅は竹籠入だった。

桜もち籠を流せば鷗かな
船つけて買ひにあがるや桜餅
葉のぬれてゐるいとしさや桜餅

これらは、劇作家であり俳人の久保田万太郎(くぼたまんたろう・1889~1963)の句です。彼は美食家として知られ、食べ物に関する句が多く、なかでも桜餅を詠んだものは30近くあります。
浅草生まれの万太郎にとって隅田川は馴染み深い場所であり、その川岸で生まれた桜餅は、江戸情緒を感じさせる特別な存在だったのでしょう。桜餅と一口にいっても、関西風の道明寺生地、関東風の小麦粉などで作る焼き皮生地の二種類がありますが、万太郎は関東風のものを思い浮かべて句を詠んだと思われます。

※出典の古い順に列記。詞書は省略した。

かゝり人が桜餅買うて戻りけり
恋ざめのこれを焼きけり桜もち
桜餅千住の花の菓子屋かな
桜餅言問は遠き身寄かな
ふりしきる雨はかなむや桜もち
三つまでうけたる猪口や桜もち
桜餅と入学試験とかな
待乳山夕越え来りさくらもち
まづのどをしめす茶であり桜餅
とりわくるときの香もこそ桜餅
さくらもち供へたる手を合せけり
桜餅二月の冷エにかなひけり
川波のあくなき曇リ桜餅
桜餅自然なほりし身もちかな
烈風の中さくらもち提げしかな
葉にめづるうすくれないや桜もち
桜餅やゝ風だてる夜なりけり
桜餅松葉屋とゝ”け来りけり
そのころをかたりて飽きず桜もち
そのころをかたりて飽かず桜もち
そのころをかたりて倦まず桜餅
桜餅うき世にみれんあればかな
くもり日のひかり指に落つ桜餅
いさくさはどこの家にも桜餅
にしき絵の古き匂やさくらもち

参考文献:

「季題別全俳句集」(『久保田万太郎全集』第14巻 中央公論社 1967年)


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