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歴史上の人物と和菓子

今も昔もお菓子好きはいるものです。歴史上の人物にまつわるお菓子のエピソードを連載しています。

※ お菓子の画像はイメージです。お問い合わせは菓子資料室 虎屋文庫までお願いいたします。

2019.06.18

立原道造とおみやげの菓子

立原道造筆「お土産物・型録(其ノ一)」(立原道造記念会 宮本則子氏提供)

夭折の詩人

立原道造(たちはらみちぞう・191439)は、戦前に活躍した詩人です。第一高等学校在学中から小説家の堀辰雄に師事し、その後室生犀星にも教えを乞いました。昭和12年(1937)に東京帝国大学工学部建築学科を卒業後、石本建築事務所に勤務し、建築家としても将来を嘱望されます。同年には詩集『萱草(わすれぐさ)に寄す』『暁と夕の詩』を立て続けに出版しますが、昭和14年、結核のため24歳という若さで亡くなりました。繊細で、音楽的響きの美しい作品の数々は、没後80年が経った今も愛されています。

手書きの「おみやげもの・カタログ」

繊細な作品のイメージから、つい食が細かったのかと思ってしまいますが、意外にも食いしん坊だったようで、彼が書いた手紙にはしばしば菓子が登場します。
昭和8年の夏、19歳だった道造は、避暑のため奥多摩の御岳山(みたけさん)に滞在していた際、弟に土産の品を選んでもらおうと「お土産物・型録(其ノ一)」を送っています。竹細工の虚無僧や、松ぼっくりでできた七面鳥などのスケッチと説明が書き添えられており、「万年筆なのとうろおぼえなので、うまくゆきません」としていますが、その細かさには驚かされます。
菓子については、柚子羊羹やわらび餅、もみじ餅を候補に挙げていますが、注目したいのは栗羊羹です。2店の菓子屋の名前が書かれ、どちらが美味しいかまで記しています。しかし「勿論大シタコトナシ」とも書いており、なかなか厳しい評価を下しています。
同じ頃の手紙には、実家から送ってもらった煎餅があまりおいしくなかったと嘆いたり、母に「ときどき甘いものが食べたくなります。そんなとき 虎屋のやうかん『夜の梅』のことなんかが頭に浮びます、といふのは、あのやうかん屋さんの広告がいつでも新聞に出てゐるせゐです」と綴ったものも残っています。率直な感想からは、無邪気な青年らしい一面が垣間見え、より一層魅力的な人物に感じられるのではないでしょうか。

※この連載を元にした書籍  『和菓子を愛した人たち』(山川出版社・税込1944円)が刊行されました。是非ご一読くださいませ。(2017年6月2日)

参考文献:

『立原道造全集5』筑摩書房 2010

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