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歴史上の人物と和菓子

今も昔もお菓子好きはいるものです。歴史上の人物にまつわるお菓子のエピソードを連載しています。
※ お菓子の画像はイメージです。お問い合わせは菓子資料室 虎屋文庫までお願いいたします。

2018.01.16

葛飾北斎と菓子

すみだ北斎美術館蔵

画狂老人

江戸中期から後期にかけて活躍した最も有名な浮世絵師の一人、葛飾北斎(かつしかほくさい・1760~1849)。『冨嶽三十六景』や『北斎漫画』などを知らない人はいないのではないでしょうか。ともかく絵を愛し、描くことだけに明け暮れて、家が汚れれば引っ越し、生涯に90回以上転居、画号も30回以上変えたといわれる奇矯な人物でした。大酒飲みのような印象も与えるのですが、その実、酒はまったく飲まず、大変な甘いもの好きだったそうで、彼を訪問する客の中には、必ず大福餅を7つ8つ持参する人がいたという話も伝わります。

菓子と菓子袋

そのわりに北斎の作品に菓子はあまり登場していません。錦絵では東海道名物の柏餅や姥が餅を作るさまなどが見られるほか、新吉原の名物だった竹村伊勢の巻煎餅の箱を題材にした大小(暦)など数点が確認されています。
菓子にかかわるものとしては、江戸八景の絵を使った菓子袋が珍しいところでしょうか。ボストン美術館所蔵の4点のうち、3点は絵図のみが切り取られているのですが、袋のまま保存されている1点を見ると、上部に2本の折り目があり、6箇所の穴があいていることから、2回折り返されて紐か水引でとめられていたことが想像されます。
江戸八景とは、中国湖南省の名勝・瀟湘八景(しょうしょうはっけい)になぞらえて、江戸の名所八箇所を描いたもの。菓子袋は「隅田落雁」で、隅田川と遠い空に飛ぶ雁の姿が描かれています。「極製御菓子」と書かれた美麗なデザインは、甘いもの好きの北斎が腕によりをかけたものではなかったでしょうか。どんな経緯でボストン美術館に収蔵されることになったのかはわかりませんが、美しい袋を大切に保存したかった江戸時代の「誰か」の気持ちは、わたしたちにもよくわかります。
 

※他は御殿山帰帆・吉原夜雨・佃島夕照・両国暮雪・不忍秋月・葵岡晴嵐・浅草晩鐘。

 

※この連載を元にした書籍  『和菓子を愛した人たち』(山川出版社・税込1944円)が刊行されました。是非ご一読くださいませ。(2017年6月2日)

参考文献:

飯島虚心『葛飾北斎伝』岩波書店 1999年
浅野秀剛「菓子袋・菓子箱と商標」(『和菓子』19号 虎屋  2012年)
『太陽浮世絵シリーズ 北斎』平凡社  1975年

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