歴史上の人物と和菓子

今も昔もお菓子好きはいるものです。歴史上の人物にまつわるお菓子のエピソードを連載しています。
※ お菓子の画像はイメージです。お問い合わせは菓子資料室 虎屋文庫までお願いいたします。

2016.12.15

歌川国貞と師走の餅搗き

歌川派の中心人物

幕末の浮世絵師、歌川国貞(うたがわくにさだ・1786~1864)は後年、師の名を継いで豊国を名乗り、三世と位置付けられています。歌川派の中心人物として浮世絵や読本の挿絵を広く手がけ、その作品数は、浮世絵師の中で最大ともいわれます。美人画と役者絵に定評があり、今年、同門の国芳との大規模な作品展が開催された話を耳にした人も多いことでしょう。

正月準備の餅

虎屋文庫では菓子関係の錦絵を収集していますが、その中でも国貞の作品は群を抜いて多く、これは手掛けた作品の数に比例するのか、それとも菓子好きだったためか、菓子屋としては後者の説を採用したいところです。
今回は「十二月之内 師走 餅つき」をご紹介しましょう。正月の準備に餅を搗くのは年末の風物詩。こうした風景を都心で見ることは、さすがに少なくなってしまいましたが、それでもスーパーやデパートの売り場に餅があふれると、年の瀬が感じられます。
錦絵は、姉さん被り・たすき掛けでかいがいしく働く女性たちの表情が印象的です。餅を搗いている左側で丸めているのは大きな鏡餅でしょう。後方の筵の上には、のし餅(四角く平らにしたもので、切り餅にする)や、なまこ餅(蒲鉾のように半円の棒状にしたもので、薄く切ってかき餅などにする)が並べられ、子どもは木の枝に小さな餅を丸くつけた餅花を手にしています。大根おろしが用意されており、ひと段落したら、からみ餅を食べるものと思われます。

餅花を持つ子ども

この作品以外にも、国貞は「意勢固世身見立十二直 極月の餅搗」「寿極月娼家の餅花」「御代春黄金若餅」「甲子春黄金若餅」「吉例餅つき御祝儀」など、餅搗きをテーマにした絵をたくさん描いていますが、画題のみ違って中身は同じものもあり、後年「乱作」といわれた片鱗も見えるようです。
しかし、それでも餅を囲む人々の姿はどれもいきいきと楽しげで、晴れがましい正月の用意に心を弾ませているのが伝わります。

※この連載を元にした書籍  『和菓子を愛した人たち』(山川出版社・税込1944円)が刊行されました。是非ご一読くださいませ。(2017年6月2日)

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