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歴史上の人物と和菓子

今も昔もお菓子好きはいるものです。歴史上の人物にまつわるお菓子のエピソードを連載しています。

※ お菓子の画像はイメージです。お問い合わせは菓子資料室 虎屋文庫までお願いいたします。

2015.02.16

室生犀星と羊羹

室生犀星が菓子を保管しておくためにだけ
愛用していた箪笥(室生犀星記念館蔵)

金沢の菓子

詩人・小説家の室生犀星(むろおさいせい・1889~1962)については、以前、幼少期の思い出をご紹介しました。彼が残した「菓子」という小文は、「主に品と雅と淡さとを目指した味わいから造られてあった」という故郷金沢の菓子をテーマにしています。「一体に軽い甘いものが多い」として書き上げられるのは、薄氷をはじめ、落雁、寿せんべい、長生殿、ちとせ、こわぶと、おぐら、芝ぶね、雛菓子等々。現在もおなじみのものに混じって、見慣れない「こわぶと」などの名前も見え、どんな菓子であったのか気にかかるところです。
親しかった芥川龍之介が金沢を訪ねた時のことにも触れています。龍之介は「菓子好きだけに直ぐ菓子のうまいことを賞め」、東京にもなかなか無いような美味しい汁粉を食べに、一緒によく町にでかけたそうです(参考:芥川龍之介と汁粉)。甘いもの好きだった2人の交流には、ほかにも時折、菓子が顔をのぞかせています。

龍之介と羊羹と

夜半(やはん)の隅田川(すみだがは)は何度見ても、詩人S・Mの言葉を越えることは出来ない。―「羊羹(やうかん)のやうに流れてゐる。」(芥川龍之介「都会で」より)
この「詩人」が犀星です。黒々とした川の流れを羊羹にたとえる感性は、まさに詩人であり、正統派甘党、といったところでしょうか。
龍之介が犀星から「赤い唐草の寂びた九谷の鉢」を貰った時の話にも、羊羹が出てきます。いわく、「これへは羊羹を入れなさい。(室生は何何し給へと云ふ代りに何何しなさいと云ふのである)まん中へちよつと五切ればかり、まつ黒い羊羹を入れなさい。」。「熱心に」こう語ったという犀星は、羊羹が好きだったのかもしれません。
室生犀星記念館には、犀星が菓子を入れるためだけに使っていたという水屋箪笥が保管されています(残念ながら現在は展示されていません)。中にはきっと、金沢のお菓子と一緒に、羊羹もしまわれていたことでしょう。

※この連載を元にした書籍  『和菓子を愛した人たち』(山川出版社・税込1944円)が刊行されました。是非ご一読くださいませ。(2017年6月2日)

 

参考文献:

『加賀金沢・故郷を辞す』講談社 1993年
『芥川龍之介全集』岩波書店 1997年ほか

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