歴史上の人物と和菓子

今も昔もお菓子好きはいるものです。歴史上の人物にまつわるお菓子のエピソードを連載しています。
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2014.11.17

柴田流星とところてん

明治生まれの江戸っ子

柴田流星(しばたりゅうせい・1879~1913)は明治12年、東京・小石川に生まれました。巌谷小波(いわやさざなみ)の門下として、児童文学の執筆やロシア文学などの翻訳を手がけましたが、34歳の若さで没しています。薄命のためか、今日伝わる作品はわずかですが、味わい深い随筆があることをご紹介しましょう。

情緒あふれる随筆

32歳の流星が、明治時代の東京に残る江戸のおもかげを思いつくままに記した『残されたる江戸』(1911)。薮入りや井戸替えといった季節のできごと、威勢のいい木遣り(きやり)や涼しげな釣忍(つりしのぶ)など情緒あふれる事物が紹介されています。
「今の東京に江戸趣味は殆(ほと)んど全く滅ぼしつくされたらうか。いゝえさ、まだ捜しさいすりやァ随分見つけ出すことが出来まさァね。」との序文にはじまり、軽妙な江戸言葉が随所に顔をのぞかせ、まるで江戸っ子と話をしているような気分になれます。
食べ物については、有名な江戸の料理屋、八百善(やおぜん)の話題があるほか、老舗の名物菓子として、「榮太樓の甘納豆、藤村の羊羹、紅谷の鹿の子、岡野の饅頭」の名を挙げています。

江戸っ子の味

また別の章に、江戸っ子にはたまらない夏の味として、氷屋の白玉と、「ところてん」が登場します。
真夏の炎天下、「路ばたの柳蔭などに荷おろして客を待つ心太(ところてん)や」から買い求めた、酢醤油がけのところてんをすすれば「腹に冷たきが通りゆくを覚ゆるばかり、口熱のねばりもサラリと拭ひ去られて、心地限りなく清々しい。」とその妙味を称え、江戸っ子は「其刹那の清々しさを買ふに、決して懐銭を読む悠長を有(も)たぬのである。」と記しています。
スーパーなどでカップ入りのところてんが季節を問わず売られている昨今、流星の愛した夏の涼味の趣きは失われてしまいましたが、それでもさっぱりした酢醤油には江戸の粋が感じられます。

※この連載を元にした書籍  『和菓子を愛した人たち』(山川出版社・税込1944円)が刊行されました。是非ご一読くださいませ。(2017年6月2日)

参考文献:

柴田流星著『残されたる江戸』洛陽堂 1911年
(国立国会図書館運営「近代デジタルライブラリー」にて電子化公開されています。)

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