歴史上の人物と和菓子

今も昔もお菓子好きはいるものです。歴史上の人物にまつわるお菓子のエピソードを連載しています。
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2014.08.18

鏑木清方と氷

美人画や風俗画で知られる明治~昭和の日本画家、鏑木清方(かぶらききよかた・1878~1972)は、意外に甘党で、当連載にも2度ほど登場しています (鏑木清方と甘いもの鏑木清方とよかよか飴売り)。そんな清方の作品に、「明治風俗十二ヶ月」(1935)があります。

氷を削る美人

東京国立近代美術館に所蔵されるこの作品は、12幅の掛軸で、2月は梅、6月は金魚、12月は雪の情景など季節の風物とともに清方らしい清楚な美人が描かれています。8月は通称「氷店」といわれ、展覧会の図録の表紙になったこともある、人気の高い絵です。
白地に紺の菊花文様の浴衣を着て、赤いたすきをきりりとかけた、たおやかな女性が、シロップを入れた瓶の並ぶ台の上で氷を削っています。明治時代、氷は鰹節を削るように、「かんな」で削っていました。落ちてくる氷を受けるために女性が手にしている足つきの器は、「氷コップ」とも呼ばれたガラスの器と思われ、ふちには赤く色がついています。絵の描かれた昭和10年頃には、氷削機と呼ばれるかき氷機が出回っていましたから、清方は、昔を懐かしく思い出しながら、この絵を描いたのかもしれません。

明治時代の氷

かき氷の歴史は、千年の昔に清少納言が『枕草子』に記した「削り氷(けずりひ)」にはじまるとされますが、庶民の口に入るようになったのは明治時代、人工的に氷を作ることが出来るようになって以降のことです。当初は「氷水」を「飲む」と言われましたが、冷房設備も冷凍庫も無かった頃のこと、かいた氷は、たしかにどんどん溶けてしまったことでしょう。
「氷」ののぼりが風にひるがえり、足元に朝顔の鉢植えが置かれた清方の絵は、「目から涼む」工夫とともに暑い季節を乗り越えていた時代を表しています。この頃、冷たい氷を食べる嬉しさは、たとえ溶けるのが早かったとしても、今よりもずっと大きかったのではないでしょうか。

※この連載を元にした書籍  『和菓子を愛した人たち』(山川出版社・税込1944円)が刊行されました。是非ご一読くださいませ。(2017年6月2日)

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