歴史上の人物と和菓子

今も昔もお菓子好きはいるものです。歴史上の人物にまつわるお菓子のエピソードを連載しています。
※ お菓子の画像はイメージです。お問い合わせは菓子資料室 虎屋文庫までお願いいたします。

2014.01.16

開高健と夜の梅

小形羊羹「夜の梅」

名コピーライターから作家へ

小説家・エッセイストとして人気を博した開高健(かいこうたけし・1930~1989)。大阪市に生まれ、大阪市立大学を卒業後、結婚して上京。寿屋(現サントリー)宣伝部に勤めていた時代のトリスウイスキーの名コピー“「人間」らしくやりたいナ”をご存知の方も多いことでしょう。
昭和33年(1958)『裸の王様』で芥川賞を受賞。平成元年に58歳の若さで亡くなりましたが、ベトナム戦争に取材した『輝ける闇』『夏の闇』をはじめ、釣りや食に関するエッセイなど、幅広い知識とユーモアに裏打ちされた多くの作品は、今も読者を惹きつけてやみません。

羊羹とウイスキー

寿屋に勤めていた時にPR誌『洋酒天国』を創刊、後年、ウイスキーのテレビCMにも出演した開高は、酒好きとして知られます。そんな彼が好んだ「ウイスキーのおいしい飲み方」は、ちょっと意外なものでした。作家の藤森益弘氏はエッセイの中で、CMの撮影でカナダに出かけた際、開高から部屋に呼ばれ、とらやの小形羊羹「夜の梅」とスコットランドのシングルモルトウイスキー「マッカラン」を渡されたことを記しています。

甘党でもあった僕は羊羹も好物のひとつだったが、ウイスキーといっしょにかじったことはなかった。しかし、これがうまかった。何とも絶妙な甘さが口の中に残り、文字通り甘美な陶酔に浸してくれた。
「どや?」と開高さんに訊かれ、「いやぁ、いけます」と答えると、「そやろ」と満足気に笑みを浮かべられた。

羊羹とウイスキーなら何でも良いのではなく、夜の梅とマッカランでなくては「絶対あかんのや」と言った開高の教えを、氏はその後も守っているそうです。
紛争の取材や釣りを目的に、世界を旅した開高健。彼の荷物の中には、小さな羊羹がいつもお供をしていたのかもしれません。

※この連載を元にした書籍  『和菓子を愛した人たち』(山川出版社・税込1944円)が刊行されました。是非ご一読くださいませ。(2017年6月2日)

参考文献:

「ウイスキーと夜とジャズと」(『サントリークォータリー』76号 サントリーホールディングス 2004年)

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