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歴史上の人物と和菓子

今も昔もお菓子好きはいるものです。歴史上の人物にまつわるお菓子のエピソードを連載しています。
※ お菓子の画像はイメージです。お問い合わせは菓子資料室 虎屋文庫までお願いいたします。

2013.09.17

松江重頼と諸国名物菓子

平野飴 『日本山海名物図会』(1754)より

異端の俳人

松江重頼(まつえしげより・1602~1680)は江戸時代前期の京都の俳人です。庶民的な作風を特徴とする貞門俳諧の祖、松永貞徳(まつながていとく)の門下で学びましたが、寛永10年(1633)に俳論書『犬子集(えのこしゅう)』の編集をめぐって対立がおこり、破門されました。才能豊かな切れ者とはいえ、性格は頑固で、師匠や先輩、同輩とうまく折り合わなかったことが背景にあるようです。しかし、その後、独自に編集した『毛吹草(けふきぐさ)』(1638年自序)は、優れた俳諧資料集として高い評価を得、今日まで読み継がれています。

諸国の名物菓子も掲載

『毛吹草』は7巻5冊からなります。貞門俳諧の作法について論じ、句作に用いる言葉を集め、句作例を四季別に分けるなど、今日の歳時記に通じるおもしろさがありますが、ここで特に注目したいのは巻4の諸国名物です。古今の名物となる産物、食品、工芸品などが国別に列記されており、菓子も40あまり掲載されています。
たとえば山城〔京都〕では、南蛮菓子、みずから〔昆布菓子〕、編笠団子、洲浜、おこし、内裏粽、ふのやき、桂飴、粟餅、御手洗団子、大仏餅、染団子、鶉餅などがあがります。みずからや染団子などは、もはや目にすることはありませんが、桂飴〔桂離宮近く〕、粟餅〔北野天神近く〕や御手洗団子〔下鴨神社〕などは、今なお京都の名菓として知られており、作り続けられていることに嬉しくなります。
一方、ほかの地域では、大和〔奈良〕の饅頭、河内〔大阪〕の平野飴、摂津〔大阪〕の御祓団子・烏帽子飴、伊勢〔三重〕のおこし米、遠江〔静岡〕の葛餅、駿河〔静岡〕の十団子(とおだんご)、近江〔滋賀〕の袖解餅(そでときもち)・柳団子、加賀〔石川〕の煎餅、土佐〔高知〕の大米餅(「たいたうもち」)などがあります。平野飴は現在もあるが、烏帽子飴は消滅か? 袖解餅はどんな餅だろう、といった疑問がわいてきて、興味深いものです。
重頼は各地を行脚し、諸国の名物を見聞したといわれており、人気の菓子に舌鼓を打ったこともあったと思われます。本人は句作の参考にと思って書き留めたのかもしれませんが、菓子研究の視点から見れば、同書は370年以上も昔の名物菓子を掲載した貴重な資料といえるでしょう。重頼の功績を讃えるとともに、記載されている謎の菓子が再び名物として、蘇ってくれないものかと願いたくなります。

※この連載を元にした書籍  『和菓子を愛した人たち』(山川出版社・税込1944円)が刊行されました。是非ご一読くださいませ。(2017年6月2日)

参考文献:

新村出校閲・竹内若校訂『毛吹草』 岩波文庫 2000年

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