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歴史上の人物と和菓子

今も昔もお菓子好きはいるものです。歴史上の人物にまつわるお菓子のエピソードを連載しています。

※ お菓子の画像はイメージです。お問い合わせは菓子資料室 虎屋文庫までお願いいたします。

2011.10.14

小金井喜美子と粟餅

粟餅

文豪の妹

小金井喜美子(こがねいきみこ・1870~1956)は、文豪森鴎外の妹にあたります。女学校を卒業後、解剖学者の小金井良精(よしきよ)と結婚しますが、兄同様に才能にあふれた喜美子は、家事や育児をこなしながら、翻訳や随筆などを発表していきました。
喜美子は、森家や夫との思い出を『鴎外の思い出』にまとめています。特に鴎外にまつわる記述は多く、いかに兄を深く敬慕していたかがうかがえます。

家族と菓子を楽しむ

文中には、喜美子が食べたり買ったりした菓子の記述が随所に見られます。たとえば、医師だった父が往診の際、 菓子をもらってきたこと、また鴎外と浅草に出かけた際、家族への土産として、仲見世で紅梅焼や雷おこしを買った ことなど。森家の人々は甘いもの好きだったようで、これらの菓子を食べながら楽しい団らんのひとときを過ごしています。

空飛ぶ粟餅

喜美子が11~12歳の頃、鴎外が学ぶ東京帝国大学がある本郷界隈へ、祖母とともに買物に出かけます。先に歩いていた祖母が振り返り、喜美子の手を引っぱって、ある店の前に立ちました。見ると店の奥にいる職人が粟餅をちぎって餡、胡麻、黄粉が入った木鉢へそれぞれ素早く投げ入れているところでした。 その早業を喜美子は「小鳥の落ちるようだといいましょうか、蝶(ちょう)の舞うようだといいましょうか、ひらひら落ちるのがちっとも間違いません」と書いています。このように粟餅を投げて客に見せるパフォーマンスは、江戸時代よく行なわれており、大変人気を集めていました。明治時代になってもまだ見られたということですから、とても興味深い話といえます。
喜美子は、できたての粟餅を買い、その晩は家族とともに「特別おいしく頂きました」と結んでいます。きっと職人の見事な手さばきを熱心に語ったことでしょう。

※この連載を元にした書籍  『和菓子を愛した人たち』(山川出版社・税込1944円)が刊行されました。是非ご一読くださいませ。(2017年6月2日)

参考文献:

小金井喜美子『鴎外の思い出』 岩波書店 1999年

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