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歴史上の人物と和菓子

今も昔もお菓子好きはいるものです。歴史上の人物にまつわるお菓子のエピソードを連載しています。

※ お菓子の画像はイメージです。お問い合わせは菓子資料室 虎屋文庫までお願いいたします。

2011.03.16

ケンペルと将軍綱吉から下された菓子

ケンペルに下された菓子

ドイツ人医師の来日

ドイツ人の医師で旅行家のエンゲルベルト・ケンペル(1651~1716)は、ドイツやポーランドなどの大学で学んだ後、スウェーデン使節団の書記官の任に就き、ロシアやペルシアほか各地をめぐります。旅の途中、オランダ東インド会社に勤め先を変え、元禄3年(1690)、医師として長崎に到着しました。滞在中は、オランダ商館長の江戸参府(えどさんぷ)に2度にわたり随行し、詳細な日記を残しました。外国人の目線であればこその記録は大変貴重なものといえます。

将軍から下された菓子

元禄5年(1692)4月24日、2度目の随行で5代将軍徳川綱吉に謁見した際、ケンペルは江戸城で出された菓子について、以下のような内容を記しています。
① 胡麻つきの中空の小さなパンのようなもの。②白い縞のついた精製した砂糖。③皮付きの榧(かや)の実。④四角い焼菓子。⑤蜂蜜の入った漏斗(ろうと)形の厚く巻いた褐色の菓子。少し歯切れが悪く、側面の一方に太陽とバラの形、もう一方に桐の木の葉1枚と花3つ(内裏の紋)がついていた。⑥豆粉と砂糖で作った赤褐色のもろい四角の薄い煎餅。⑦黄色の焼餅。⑧焼いて小さく切った四角い菓子。中に柔らかい求肥入り。⑨大きな壺に入れた餡入りの饅頭。⑩⑨より小さい普通の大きさの饅頭。
①は江戸時代の菓子製法書などにみえる「胡麻胴乱(ごまどうらん)」を思わせます(「牧野富太郎とドーラン」参照)。また、⑤の歯切れが悪い菓子とは、餅菓子のことでしょうか。
一行は、すべての種類を少しずつ食べ、残りは白い紙に包んで持ち帰ります。退出後、謁見に同席した長崎奉行が「オランダ人がこんなに厚遇されたことは初めてです」と語っているので、こんなにたくさんの菓子が出たのは、特別なことだったのかもしれませんね。
残念ながらケンペルは、味についての感想を書いていませんが、それにしても細かな描写です。宿で包みを開き、あらためてよく観察してから日記に書きとめたのでしょうか。

※  将軍に貿易許可の礼を述べるため、江戸城に謁見に赴くこと。

※この連載を元にした書籍  『和菓子を愛した人たち』(山川出版社・税込1944円)が刊行されました。是非ご一読くださいませ。(2017年6月2日)

参考文献:

『江戸参府旅行日記』平凡社 1997年

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