歴史上の人物と和菓子

今も昔もお菓子好きはいるものです。歴史上の人物にまつわるお菓子のエピソードを連載しています。
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2010.05.16

喜田川守貞と柏餅

江戸時代の風俗研究家

喜田川守貞(きたがわもりさだ・1810~?)は、江戸時代の風俗を知る上で貴重な『守貞謾稿』(もりさだまんこう・『近世風俗志』とも)を著わした人物です。同書は、守貞が天保8年(1837)から慶応3年(1867)頃までの間に書き留めた、30巻余に及ぶ大著で、明治41年(1908)に刊行されました。時勢、地理、人事、生業、雑業、貨幣、音曲、遊戯、食類などの項目別に、細かな解説が絵図を交えて掲載されており、守貞の博覧強記ぶりに圧倒されます。
守貞は大坂生まれで、本姓は石原でした。31才まで同地で過ごしましたが、天保11年に江戸に移って北川家の養子となります(名は庄兵衛とも。喜田川は、北川の借字と解釈される)。北川家は砂糖を扱う商家だったようですが、守貞は持ち前の好奇心からか、風俗考証に興味をもち、諸書にあたっては紙片に記録し、たまったものを冊子にしたと考えられます。

江戸は柏餅、京坂は粽で祝う初節句

菓子についても記述は細かく、有平糖・金平糖の作り方や、唐菓子(とうがし)・羊羹類の名を記した古文献の引用、年中行事や江戸名物に関わる菓子の言及など、古今の事情に精通した、守貞の視野の広さを感じさせます。どの項目にもいえることですが、江戸と京坂(京都・大坂)との風俗の違いが述べられている点も興味深いもの。朧饅頭(皮をむいた饅頭)は、江戸では珍しいが、京坂では仏事などに使うこと、江戸の月見団子は丸く、京坂では小芋形であるなど、今に通じる記述が見られます。また、端午の初節句の場合、江戸では親族などに柏餅を贈るが、京坂では粽を使うとのこと(2年目からは柏餅)。大坂と江戸という守貞自身の東西の生活体験に基づくものでしょう。柏餅についてはさらに、三都とも米の粉をねって円形、扁平とし、二つ折にして餡をはさむが、柏の葉が小さい場合は二枚の葉で合わせることも見えます。また、江戸には味噌餡(砂糖入味噌)もあり、小豆餡は葉の表、味噌餡は葉の裏を出した由。具体的な描写から、当時の人々が好みの柏餅をほおばる場面なども想像でき、ほほえましく感じられます。

※この連載を元にした書籍  『和菓子を愛した人たち』(山川出版社・税込1944円)が刊行されました。是非ご一読くださいませ。(2017年6月2日)

参考文献:

宇佐美英機校訂『近世風俗志』全5巻 岩波文庫 1996~2002年
朝倉治彦・柏川修一校訂編集『守貞謾稿』全5巻 東京堂出版 1992年

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