歴史上の人物と和菓子

今も昔もお菓子好きはいるものです。歴史上の人物にまつわるお菓子のエピソードを連載しています。
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2008.08.16

鏑木清方と甘いもの

鶯餅

美人画や風俗画で有名な日本画家

鏑木清方(かぶらききよかた・1878~1972)は、明治11年東京神田に生まれました。浮世絵師の月岡芳年門下の水野年方(としかた)に入門、若くして新聞の挿絵を描き始め、尾崎紅葉、泉鏡花、島崎藤村などの小説の挿絵を手がけて人気を集めます。その後、日本画家として本格的に活動するようになり、文展や帝展などで受賞を重ね、清楚な美人画や下町情緒あふれる風俗画を中心に数多くの名品を残しました。

清方の好きな菓子

清方は随筆も著しており、甘いものについてしばしば触れています。たとえば東京名物や土産に関しては、現在も有名な栄太楼(榮太樓)の甘納豆、梅花亭のどら焼、空也の最中ほか、蟹屋の「屠蘇おこし」や野村の「のの字落雁」など、もはや存在しない店名や菓子名もあげており、その味が気になります。自身の嗜好については「甘党だけれどひどく甘い菓子は好かない」とあり、「昔からの番茶菓子」ともいえる鹿の子、紅梅餅、大福、金つば、田舎饅頭、鶯餅などが好物でした。「上物は敬遠して駄物を悦ぶ」「練羊羹よりは蒸羊羹を取る」とも見え、画風そのままに、庶民的な菓子を愛していたようです。

懐かしの汁粉屋の風情

清方が思い起こす汁粉屋の記述も味わい深いもの。「人情本の挿画にでも見るような小粋な造りで、床にも細ものの茶懸に、わびすけでも活けてあろうという好み、たかだか三尺が一間の入口には、茶色の短い暖簾、籠行燈という誂えの道具立て」とあり、かつてはこうした「明治趣味」の雰囲気が漂う店が多かったようです。往時の汁粉屋にふらりと立ち寄りたい気持ちにかられます。

※この連載を元にした書籍  『和菓子を愛した人たち』(山川出版社・税込1944円)が刊行されました。是非ご一読くださいませ。(2017年6月2日)

参考文献:

『随筆集 明治の東京』岩波文庫所載の「甘いものの話」(昭和7年)「名物無名物」(昭和19年)

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