歴史上の人物と和菓子

今も昔もお菓子好きはいるものです。歴史上の人物にまつわるお菓子のエピソードを連載しています。
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2005.12.16

芥川龍之介と汁粉

漱石も絶賛した天才

大正時代の小説家、芥川龍之介(1892~1927)。東大在学中から36歳で自殺するまで、古典を題材にした『羅生門』『芋粥』ほか、短編を中心とした数多くの作品を残しました。独自の作風で文壇に大きな影響を与えたことは、新人の文壇登龍門「芥川賞」に名を残していることからもうかがえます。

甘党の素顔

どちらかといえばニヒルな印象の強い龍之介ですが、その実、大の甘党だったようで「雪の降つた公園の枯芝は何よりも砂糖漬にそつくりである」(『都会で』)などの名言(?)も残しています。そういわれると、芝の上に白く積もった雪が、きらきらしたグラニュー糖や上白糖に見えてくるような気がします。
随筆『しるこ』の中では、関東大震災以降、東京で汁粉屋が減ってしまったことを「僕等(ぼくら)下戸仲間(げこなかま)の爲には少(すくな)からぬ損失である。のみならず僕等の東京の爲にもやはり少からぬ損失である。」と書いています。そして、西洋人が汁粉の味を知ったならば「麻雀戲(マージヤン)のやうに世界を風靡(ふうび)しないとも限らない」とし、ニューヨークやパリのカフェで、彼らが汁粉をすするさまを想像するのです。
いかにも楽しげなこの随筆が書かれたのは、実は、龍之介が自殺を遂げるわずか2ヵ月半ほど前のことでした。彼の死が日本にとって大きな損失だったことは間違いありません。
ちなみに、虎屋がパリに店を出したのは、1980年。執筆の約50年後のことです。それからさらに25年が過ぎましたが、フランス人でお汁粉を好む人はまだまだ少ないとのこと、お汁粉が世界を風靡するには、もう少し時間がかかりそうです。

※この連載を元にした書籍  『和菓子を愛した人たち』(山川出版社・税込1944円)が刊行されました。是非ご一読くださいませ。(2017年6月2日)

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