歴史上の人物と和菓子

今も昔もお菓子好きはいるものです。歴史上の人物にまつわるお菓子のエピソードを連載しています。
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2004.05.16

北原白秋とカステラ

『邪宗門(じゃしゅうもん)』発表

「からたちの花」「ペチカ」「この道」などの童謡の詩で今も親しまれている北原白秋(きたはらはくしゅう・1885~1942)は、明治18年、福岡県山門郡沖端村(現柳川市)の裕福な海産物問屋に生まれました。中学を中途退学すると上京、早稲田大学英文科予科に入学し、感覚的、官能的な象徴詩の創作を続け、早くも25歳で発表した詩集『邪宗門』(キリスト教の意)で一躍注目されます。この作品に南蛮情緒が漂っているのは、白秋がキリシタン文化の色濃く残る九州生まれだったことが影響しているといわれます。特にキリシタンにゆかりがあり、外来文化の窓口だった長崎は白秋にとって憧れの地だったと伝えられます。

カステラ礼讃

そうした背景もあり、長崎名物そして南蛮菓子の代表として知られるカステラに、白秋 は特別な思いを抱いていたのでしょう。『邪宗門』刊行の翌年、雑誌『創作』に掲載され たエッセイ「桐の花とカステラ」には、その魅力について「…粉っぽい新しさ、タッチの フレッシュな印象、実際触って見て懐かしいではないか。…」と記されています。このほか白秋は「カステラの黄なるやはらみ新しき味ひもよし春の暮れゆく」という歌や、カステラの詩(第二詩集『思ひ出』収載)も書いています。
文豪夏目漱石が『草枕』で羊羹をたたえたように、白秋はカステラを礼讃し、美文を残 してくれたといえるでしょう。カステラの色や質感が、言葉の魔術師ともいわれた白秋に 創作のインスピレーションを与えたことが興味深く思われます。

※ 南蛮菓子とは、16~17世紀、南蛮(ポルトガルやスペイン)との交易や宣教師の布教をきっかけに、 伝えられた菓子のこと。カステラほか、金平糖やぼうろ、有平糖などがある。

※この連載を元にした書籍  『和菓子を愛した人たち』(山川出版社・税込1944円)が刊行されました。是非ご一読くださいませ。(2017年6月2日)

 

 

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