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歴史上の人物と和菓子

今も昔もお菓子好きはいるものです。歴史上の人物にまつわるお菓子のエピソードを連載しています。
※ お菓子の画像はイメージです。お問い合わせは菓子資料室 虎屋文庫までお願いいたします。

2002.09.16

清少納言と餅餤

『枕草子』に登場

自然の風物や日常のこまごました思いを、独特の視点で描いた清少納言の随筆『枕草子』。そのなかには、彼女が暮した華やかな平安時代の宮廷の様子も描かれており、136段(伝能因本)にはお菓子に因むこんな話が出てきます。
ある日「藤原行成様からです」といって、梅の花を添えた白い紙包みが、清少納言のもとへ届けられます。包みを開けると、餅餤(へいだん)がふたつ並んで入っており、一緒に行成の「本当は自ら持参すべきなのですが…」という文が添えられていました。 そこで清少納言は「自分自身で持ってこないのはひどく冷淡に思いますが?」と、紅梅を添えて返事を送りました。

どんなお菓子?

ここに登場する「餅餤」は、奈良~平安時代に中国からもたらされた唐菓子のひとつです。平安時代の漢和辞書『和名類聚抄』には、鵝(がちょう)や鴨の子、雑菜などを煮合わせたものを餅で挟み、四角に切ったもの、とあります。今の感覚で見るならば、お菓子というより、サンドイッチのような軽食にも思えます。『枕草子』では、個人的な贈り物として使われていますが、他の唐菓子同様、官吏登用の際の饗応などとして使われることが多かったようです。当時菓子といえば木の実や果物のことでしたから、味付けされた肉などが挟まれた唐菓子の餅餤は、平安の貴族にとって、さぞモダンに感じられたことでしょう。

へいだん?れいたん?

ところで藤原行成に送った清少納言の文は、「「餅餤」に「冷淡」をかけたのは、機知に富んでいる。」と、行成が大勢の貴族の前で話したこともあり、大変評判になりました。このことについて清少納言は、「見苦しい自慢話でしたが」と言って話を締めています。ともすればたわいのない駄洒落のようにも思えますが、こうした言葉遊びは平安貴族の心をくすぐる、スパイスのようなものだったのかもしれません。

※この連載を元にした書籍  『和菓子を愛した人たち』(山川出版社・税込1944円)が刊行されました。是非ご一読くださいませ。(2017年6月2日)

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