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歴史上の人物と和菓子

今も昔もお菓子好きはいるものです。歴史上の人物にまつわるお菓子のエピソードを連載しています。

※ お菓子の画像はイメージです。お問い合わせは菓子資料室 虎屋文庫までお願いいたします。

2001.12.29

近衛内前と蓬が嶋

蓬が嶋

銘菓の名付け親

新年には干支菓子・お題菓子をはじめ、鶴や亀・松竹梅など、おめでたい意匠の菓子が喜ばれます。今回は正月祝いにちなみ、当店の寿ぎの菓子「蓬が嶋」をご紹介しましょう。蓬が嶋とは、中国の伝説にみえる、不老不死の仙人が住む理想郷のこと。蓬莱山 (ほうらいさん)、蓬莱島とも呼ばれ、松竹梅が生い茂り、鶴亀が遊ぶ島として、古来多くの美術品に描かれています。

菓子の場合、子持ち饅頭になってしまうのですから楽しいもの。これは名前が示すとおり、小さな饅頭を包みこんだ大饅頭で、半分に切ると、中の子饅頭の紅・黄・紫・緑・白の色合いが目にも鮮やかです (写真) 。結婚式の引出物に使われることも多く、その愛らしさには思わず笑みもこぼれます。

この饅頭の命銘者が、江戸時代中期の公家、近衛内前 (うちさき) 公 (1728~85) です。当店の延享3年 (1746)『御用御菓子御直段帳』により、宝暦12年 (1762) 10月6日に御銘を賜ったことがわかっています。

同年同月18日条の製法によれば、当時の「蓬が嶋」は高さ2寸5分 (7.5センチ) 、まわり (直径か?) 5寸6、7分 (約17センチ) で小倉餡入りの小さな朧饅頭が20個入っていました。現在の五色の餡に比べ、地味な印象ですが、饅頭の数の多さにはびっくりです。この子持ち饅頭に「蓬が嶋」の銘をつけられた、内前公 (当時まだ35歳) の発想はおみごと。関白、摂政太政大臣などをつとめた器量に加え、洒落たセンスの持ち主だったのではと想像したくなります。ちなみに内前公の著した日記『内前公記』は、宮中での諸行事を記した史料として、評価が高いものです。

※この連載を元にした書籍  『和菓子を愛した人たち』(山川出版社・税込1944円)が刊行されました。是非ご一読くださいませ。(2017年6月2日)

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