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歴史上の人物と和菓子

今も昔もお菓子好きはいるものです。歴史上の人物にまつわるお菓子のエピソードを連載しています。

※ お菓子の画像はイメージです。お問い合わせは菓子資料室 虎屋文庫までお願いいたします。

2001.08.01

松尾芭蕉とところてん

清滝の水汲みよせてところてん

松尾芭蕉 (1644~1694) といえば、「静かさや岩にしみいる蝉の声」などの句で小学生にも知られる江戸時代前期の俳人です。当時戯れ (たわむれ) 、滑稽 (こっけい) を主としていた俳諧 (はいかい) が、「わび」の美的境地にまで高められたのは彼の功績とされています。代表作『おくのほそ道』は江戸深川から奥州、北陸の名所旧跡を巡り美濃大垣へ至る間の俳諧紀行文です。彼はこの作品を通じ、旅こそ人生という考えに達し、さらに上方にて漂泊生活を続けました。また、京都嵯峨野の落柿舎 (らくししゃ) に滞在し、『嵯峨日記』を著しました。

『顔文字ゑつくし』(1766)江戸時代のところてん売り

今回、菓子との関連でご紹介するこの句は、奥嵯峨のさらに奥にある水の里、清滝 (きよたき) で夏に味わったところてんの涼を詠んだものと思われます。良質のてんぐさと水がすべてともいえる「ところてん」と、地名の響きからして清涼感のある「清滝」の取合わせは絶妙です。芭蕉が詠んだその実物を私たちも味わってみたくなります。

ところてんの歴史は古く、すでに平安京では東西の市で「心太 (こころぶと)」の名で売られていました。これは、ところてんの原料となる天草が凝藻葉 (こるもは) といわれ、その俗称が「こころぶと」だったためとされています。今でも漢字でところてんを「心太」と表記するのはこの名残です。

ゼリーやシャーベットなど涼菓のない時代、芭蕉の味わった夏のところてんは現在とは比較にならないほど有難い食べ物だったことでしょう。

※この連載を元にした書籍  『和菓子を愛した人たち』(山川出版社・税込1944円)が刊行されました。是非ご一読くださいませ。(2017年6月2日)

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