社長挨拶

建て替えのために2年前より休業している赤坂店は、今秋、新たな店に生まれ変わり、皆さまをお迎えいたします。休業中はご不便をお掛けしているにも関わらず、ご利用くださっていた多くのお客様が変わらず近隣の店舗に足を運んでくださり、大変ありがたい気持ちで一杯です。お客様とのつながりを常に感じられていることは、新しい赤坂店をつくる上でも大きな励みになっています。

私たちが初めて赤坂に店を構えたのは、明治12年(1879年)のこと。それから約140年の間、明治、大正、昭和、平成という変化に富んだ時代をこの地で過ごし、人々の生活や街の変遷とともに虎屋の店も度々姿を変えてきました。赤坂の中で3度移転し、建物としては10月にオープンする店が5代目となります。この店で歩んでゆくこれからの時代は、これまでとはまったく異なるものになるのでしょう。日本ではずっと、経済成長にしても人口にしても数字が増えていくことが当たり前で、企業や社会のシステムもそれを前提に成り立ってきました。大きさや豪華さといった目に見えるものから満足を得、あらゆるものを増やすこと、また増えることに一つの価値が置かれていたと思います。ところが今、世界的にみても社会は「量」から「質」に転換しています。今の時代を生きる人々が求めるものは数字や形には表れないものの中にあり、シンプルさ、あたたかさ、自然体、そうしたものの存在感が増しているように思います。

これまで地上9階建てであった虎屋ビルですが、新しい赤坂店は、和菓子の製造場(虎屋では御用場と呼んでいます)、菓子を召し上がっていただく場、買い物をしていただく場、和菓子や多様な文化を発信するギャラリーという、和菓子屋として必要な要素のみからなる低層階の店となります。しかし単に建物が変わるということではなく、時代の変化を虎屋なりに受け止め、ここでは今までにない視点から新たなおいしさ、空間、サービスをご提供してゆきたいと思っています。そしてかたちが変わっても、経営理念である「おいしい和菓子を喜んで召し上がって頂く」ことへの飽くなき追求は変わりません。

私は毎日、工事中の赤坂店の前を通っていますが、建物のかたちも少しずつ見えてきました。完成まであと半年、笑顔で皆様をお迎えできるよう、準備にも最善を尽くしてまいります。

代表取締役社長 黒川 光博