社長挨拶

昨年は虎屋にとって、ご高齢者を大切にする企業になろうという目標に向かって、大きな一歩を踏み出した年でした。ご高齢の方のお気持ちやお身体のことについて、社内の皆でレクチャーを受け始めたのは3年ほど前のこと。そして、年齢を重ねられても、いつまでも羊羹の味わいを楽しんでいただくことはできないだろうかと、噛む力や飲み込む力が弱くなった方にも召し上がっていただきやすい硬さの羊羹を数年の試行錯誤の末に開発し、やわらか羊羹『ゆるるか』として発売することができました。発売後、お客様から、「父が本当に柔らかいものでないと食べられないので、とても嬉しい」というお声や、「90代の祖母にあげるのにぴったり」といった嬉しいお声を頂戴しています。また、「年老いた両親と孫までもが同じものを食べ、同じテーブルを囲めることの幸せを感じた」というお話を聞かせていただいた時には、ご高齢の方にお喜びいただけるよう開発を始めた『ゆるるか』ではありましたが、小さなお子様からご高齢の方まで、あらゆる世代のご家族が同じテーブルで同じものを召し上がるということの大切さもあらためて教えていただきました。
人は誰しも、自分の仕事が社会につながっているか、必要とされることをやっているのか、との疑問が頭をよぎることがあるのではないでしょうか。
この度の『ゆるるか』の開発は、私たちの菓子づくりが確かに社会とつながり、少しではありますがお役に立てているのだと感じることができた良い機会になりました。社員一人ひとりが自分の携わっている仕事の尊さ・意義について考える貴重な経験とすることができたのです。

なお、「ゆるるか」とは源氏物語などにも見られる「ゆるやか」と同じ意味合いの言葉で、ご家族やご友人と一緒にゆったりと和菓子を楽しむ豊かな時間をお過ごしいただきたいという思いが込められています。

本年も引き続き、世代を超えてお喜びいただける菓子づくりに邁進してまいります。

代表取締役社長 黒川 光博