社長挨拶

9月7日より、やわらか羊羹『ゆるるか』を販売します。原材料は、小豆、寒天、砂糖のみで、ほどよくやわらかな食感と、餡の風味がしっかりと感じられる味わいが特徴です。年を重ねると、今まで好んで食べていたものが、硬く感じたり、飲み込みにくくなることがあります。いつまでも羊羹の味わいを楽しんでいただきたいという思いから、配合や製造方法などを試行錯誤し、噛む力、飲み込む力が弱くなったご高齢の方にもお召し上がりいただきやすい羊羹の硬さを実現しました。
以前にも何度かここでお話ししましたが、弊社がご高齢者について考えはじめたのは16年ほど前のことです。青梅市にあるご高齢者専門の療養型病院で、入居者の方とそのご家族に、和菓子製造の実演をまじえながら生菓子を召し上がっていただく会を開きました。以降、毎年母の日に開催しており、ここでの活動がご高齢者に対する認識を深めるきっかけとなりました。この病院で開催された「秋の味覚祭り」で、お汁粉をご提供した時のことです。少し離れた棟に入居され、久しく病棟の外へお出にならなかった患者様が、お汁粉を召し上がるために会場まで来てくださり、病院スタッフの方々を大変驚かせました。またお口から食事を摂っていらっしゃらなかった患者様が、この日、数ヶ月ぶりの食事としてお汁粉を召し上がりました。このような場面に触れるにつけ、こうした尊いことに携わらせていただけることに深い感謝の念を抱き、ご高齢者とそのご家族の方々がお過ごしになる、和やかなひとときに寄り添える菓子を作りたいという思いが募っていきます。

菓銘とした「ゆるるか」とは、ゆとりのあるさまや、ゆっくりしたさまを意味する言葉です。和菓子をきっかけとし、いつまでも、ゆったりと流れる豊かな時間をお過ごしいただきたいという私たちの願いを込めました。

「おいしい和菓子を喜んで召し上がって頂く」、この経営理念の実現に向け、社員一人ひとりが生き生きとその存在感を示していってほしい。それはいつも虎屋が目指している方向です。

代表取締役社長 黒川 光博