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さて、ある日宗牧は日坂(静岡県)の茶屋で休憩をとります。そこで出されたのが名物の蕨餅でした。宗牧はかつて食べたことがあったようで、感慨もひとしおに「年たけて又くふ(食)べしと思ひきや蕨もちひ(餅)も命なりけり」と歌を詠んでいます。これは西行の和歌(※)をもとにしたのでしょう、おいしい蕨餅で旅の疲れを癒す様子がうかがえます。
蕨餅は、蕨の根から取れる澱粉で作る菓子で、街道の整備に伴い江戸時代には広く知られるようになりました。しかし、大量販売のためか蕨粉だけで作るのは難しくなったようです。江戸時代初期の儒学者林羅山(はやしらざん)の『丙辰紀行(へいしんきこう)』(1638)には、蕨粉と葛粉をあわせた生地を蒸し、塩味の黄粉をかけたと書いてあります。さて、宗牧の時代はどうだったのでしょうか。『丙辰紀行』より100年近く遡りますので、あるいは蕨粉だけで作られていたかもしれませんね。 ※ 年たけて又こゆべしと思ひきや いのちなりけり さ夜の中山(『新古今和歌集』羇旅歌)
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