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子供たちに優しく語りかける童話の世界には、甘い菓子はかかせないモチーフといえます。賢治の作品に登場するお菓子は、餅、団子、飴、金平糖、パイ、ワッフルほか果物などもあわせると、驚くほど、バラエティに富んでいます。その中の一つをご紹介します。
『鹿踊りのはじまり』という童話は、主人公の嘉十が、湯治に行く途中の小休止の折に、野原で自家製であろう粟と栃でできた団子を食べることからはじまります。嘉十は、残った団子をもったいないと思い、鹿のために置いていきますが、そばに、手ぬぐいを忘れてしまいます。鹿たちは、見たこともない手ぬぐいに恐れを感じ、魅力的な団子をなかなか口にすることが出来ません。少しずつ近づき、やっと食べることができると、喜び勇んで踊りだすというあらすじです。鹿の姿をそっと覗く嘉十の姿がほほえましい話です。この童話は、遠野地方に伝わる伝統芸能「鹿踊り」の「始まり」として、賢治が創作したといわれています。
賢治自身の生活の中にも定着していた菓子は、餅・団子類といえ、遠野地方には、多様な餅が伝承されていることにも結びつきます。そして、農業に携わり、自ら作物を作っていた賢治にとって、菓子は嗜好品の一つというよりも、神聖なものであり、宝物のように感じていたのではないでしょうか。
写真は、粟を使ったお菓子「粟餅」です。
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