国宝『紅白梅図屏風』、『燕子花 (かきつばた) 図屏風』などの作者として有名な尾形光琳 (おがたこうりん:1658〜1716) は、華やかな元禄時代を代表する絵師です。
虎屋には光琳が、パトロンであった銀座役人、中村内蔵助 (くらのすけ) にお菓子を贈った記録が残っています。『諸方御用留帳』の宝永7年 (1710) 5月21日条によって、10種類ほどのお菓子をご注文いただき、届け先にて二重の重箱二組に詰めたことがわかります。
そのうち「色木の実 (いろこのみ)」と「友千鳥」は宝永4年 (1707) の『御菓子之畫圖』から当時の色形や材料を知ることができます。
「色木の実」はくちなしと小豆で着色した生地で、秋に色づいた木の実と葉を表しています。前述の史料によれば、なんと150個も注文されました。明治以降、実の方は作られなくなり、現在虎屋では同じ菓銘で葉のみを作ることがあります。また、「友千鳥」はそぼろ状にした餡に小豆の粒を混ぜ、蒸したものと思われます。小豆の粒を群れ飛ぶ千鳥に見立てたのでしょう。
光琳はすぐれたデザイナーでもあり、動植物を大胆にデザイン化した優れた意匠には、後に「光琳鶴」「光琳菊」「光琳梅」などとその名が冠されるようになりました。これらの名称やデザインは、現在の和菓子にも取り入れられています。和菓子には元禄の美意識が今も息づいているといえるでしょう。